いた。
蓋をあけても中身はすぐに判らなかった。中にしまってある品は、魚の皮とも油紙とも性《しょう》の得知れない薄黄色いものに固く包まれていた。
「べらぼうに厳重だな」
包みを解いて熊蔵は思わずあっ[#「あっ」に傍点]と叫んだ。ふたりの眼の前に現われたものは人間の首であった。併しそれは幾千百年を経過したか容易に想像することを許さないほどに枯れ切った古い首で、皮膚の色は腐った木の葉のように黒く黄ばんでいた。半七や熊蔵の眼には、それが男か女かすらも殆ど判断が付かなかった。
二人は息を嚥《の》んで、この奇怪な首をしばらく見つめていた。
二
「親分。こりゃあ何でしょう」
「判らねえ。なにしろ、そっちの箱を明けてみろ」
熊蔵は無気味そうに第二の箱をあけると、その中からも油紙のようなものに鄭重に包まれた一個の首が転げ出した。併しそれは人間の首でなかった。短い角《つの》と大きい口と牙《きば》とをもっていて、龍とも蛇とも判断が付かないような一種奇怪な動物の頭であった。これも肉は黒く枯れて、木か石のように固くなっていた。
奇怪な発見がこんなに続いて、二人は少なからずおびやかされた。
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