半七捕物帳
石燈籠
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)書役《しょやく》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)七、八人|乃至《ないし》十人

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)三人はきゃっ[#「きゃっ」に傍点]と
−−

     一

 半七老人は或るとき彼のむかしの身分について詳しい話をしてくれた。江戸時代の探偵物語を読む人々の便宜のために、わたしも少しばかりここにその受け売りをして置きたい。
「捕物帳というのは与力や同心が岡っ引らの報告を聞いて、更にこれを町奉行所に報告すると、御用部屋に当座帳のようなものがあって、書役《しょやく》が取りあえずこれに書き留めて置くんです。その帳面を捕物帳といっていました」と、半七は先ず説明した。「それから私どものことを世間では御用聞きとか岡っ引とか手先とか勝手にいろいろの名を付けているようですが、御用聞きというのは一種の敬語で、他からこっちをあがめて云う時か、又はこっちが他を嚇《おど》かすときに用いることばで、表向きの呼び名は小者《こもの》というんです。小者じゃ幅が利か
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