う》の人間であった。おじさんは無論喜んで引き受けた。
そこで、おじさんは考えた。昔話の綱《つな》や金時《きんとき》のように、頼光《らいこう》の枕もとに物々しく宿直《とのい》を仕《つかまつ》るのはもう時代おくれである。まず第一にそのおふみという女の素性を洗って、その女とこの屋敷との間にどんな糸が繋《つな》がっているかということを探り出さなければいけないと思い付いた。
「御当家の縁者、又は召使などの中に、おふみという女の心当りはござるまいか」
この問いに対して、小幡は一向に心当たりがないと答えた。縁者には無論ない。召使はたびたび出代りをしているから一々に記憶していないが、近い頃にそんな名前の女を抱えたことはないと云った。更にだんだん調べてみると、小幡の屋敷では昔から二人の女を使っている。その一人は知行所の村から奉公に出て来るのが例で、ほかの一人は江戸の請宿《うけやど》から随意に雇っていることが判った。請宿は音羽《おとわ》の堺屋というのが代々の出入りであった。
お道の話から考えると、幽霊はどうしても武家奉公の女らしく思われるので、Kのおじさんは遠い知行所を後廻しにして、まず手近かの堺屋
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