蜘蛛の夢
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)嘉永《かえい》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)三年|戌歳《いぬどし》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ませ[#「ませ」に傍点]ていた
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一
S未亡人は語る。
わたくしは当年七十八歳で、嘉永《かえい》三年|戌歳《いぬどし》の生れでございますから、これからお話をする文久《ぶんきゅう》三年はわたくしが十四の年でございます。むかしの人間はませ[#「ませ」に傍点]ていたなどと皆さんはよくおっしゃいますが、それでも十四ではまだ小娘でございますから、何もかも判っているという訳にはまいりません。このお話も後に母などから聞かされたことを取りまぜて申上げるのですから、そのつもりでお聴きください。
年寄りのお話はとかくに前置きが長いので、お若い方々はじれったく思召《おぼしめ》すかも知れませんが、まずお話の順序として、わたくしの一家と親類のことを少しばかり申上げて置かなければなりません。わたくしはその頃、四谷の石切横町に住んでいました。天王《てんの
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