た女――着物は変っていましたけれど、確かにそれに相違ないので、わたくしは俄かにからだ中が冷たくなって、手も足もすくんでしまうように思われました。どこの何という人か知りませんけれど、ともかくも叔父と連れ立って、きのうここへ来た女がきょうもまたここへ来て、しかも雷に撃たれて死んだということが、わたくしに取っては不思議なような、怖ろしいような、何かの因縁《いんねん》があるような、一種の言うにいわれない不気味さを感じたのでございます。こう申すと、みなさんは定めてお笑いになるかも知れませんが、わたくしはその時まったく怖かったのでございます。
死骸のまわりには大勢の人があつまっていましたが、唯《ただ》がやがやと騒いでいるばかりで、その女がどこの誰だか、識っている者はないようでございます。自身番からも人が来て、御検視を願うのだとか言っていました。
叔父のところへ知らせてやれば、おそらく身許《みもと》は判るだろうと思うのですけれど、うっかりしたことを言っていいか悪いか判りませんから、わたくしは急いで家へ帰って来て、母にその話をしますと、母も顔をしかめて考えていましたが、そんなことに係《かか》り合う
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