助は、相方のお花を遠ざけて差向かいになった。
「半九郎。どうした。人でも斬ったか」と、市之助は小声できいた。
 半九郎の着物の膝は、血しぶきにおびただしく染められているのを、彼は早くも見付けたのであった。
「推量の通りだ。半九郎は人を斬って来た」
「誰を斬った。お染を斬ったか」
「いや、女でない。源三郎を斬った」
 市之助もぎょっ[#「ぎょっ」に傍点]とした。彼は寝衣《ねまき》の膝を立て直して又きいた。
「なぜ斬った。口論か」
「おれも短気、源三郎も短気、ゆるしてくれ」
 果し合いの始末を聞かされて、市之助はいよいよ驚いた。
「お身と源三郎とが河原へ駈け出したら、お染はなぜ早くおれに教えてくれなんだか。しかしそれを今更いっても返らぬ。そこで半九郎、お身はこれからどうする積りだ」
「仇と名乗って討たれに来た。殺してくれ」
「弟の仇……見逃す法はない。ここで討つのは当然だが、おれが頼む、逃げてくれ」と、市之助は言った。「お身とおれは竹馬《ちくば》の友だ。源三郎とても同様で、互いに意趣も遺恨もあっての果し合いでない。いわば当座の行きがかりで、討つ者も討たるる者も詰まりは不時の災難だ。さっき弟
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