の女の正体がこれであるのは誰にも想像されることであるから、大勢は騒ぎ立てて捕えようとしたが、短い武器では高い梁の上までとどかないので、さらに弓矢や長い矛《ほこ》を持ち出して追い立てると、怪鳥は青い燐《おにび》のような眼をひからせ、大きい翅《つばさ》をはたはたと鳴らして飛びめぐった末に、門を破って逃げ去った。
 そこで、倒れている婿と※[#「女+息」、第4水準2−5−70]とを介抱して、事の子細を問いただすと、婿は血の流れる眼をおさえながら言った。
「寝間へはいったものの、※[#「女+息」、第4水準2−5−70]ふたりではどうすることも出来ないので、しばらく黙ってむかい合っているうちに、左側にいた女がたちまちに袖をあげてわたしの顔を払ったかと思うと、両の眼玉は抉《く》り取られてしまった。その痛みの劇《はげ》しさに悶絶して、その後のことはなんにも知らない」
 ※[#「女+息」、第4水準2−5−70]はまた言った。
「わたしは婿殿の悲鳴におどろいて、どうしたのかと思って覗こうとすると、その顔を不意に払われて倒れてしまいました」
 彼女も両眼を抉り取られているのであった。それでも二人とも命に別
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