を積んで生きながら焚《や》いてしまった。その以来、都に驚風を病む小児が絶えた。

   羅刹鳥《らせつちょう》

 これも鳥の妖である。清の雍正《ようせい》年間、内城の某家で息子のために※[#「女+息」、第4水準2−5−70]《よめ》を娶《めと》ることになった。新婦の里方《さとかた》も大家《たいけ》で、沙河門外に住んでいた。
 新婦は轎《かご》に乗せられ、供の者|大勢《おおぜい》は馬上でその前後を囲んで練《ね》り出して来る途中、一つの古い墓の前を通ると、俄かに旋風《つむじかぜ》のような風が墓のあいだから吹き出して、新婦の轎のまわりを幾たびかめぐったので、おびただしい沙《すな》は眼口を打って大勢もすこぶる辟易《へきえき》したが、やがてその風も鎮まって、無事に婿《むこ》の家へ行き着いた。
 轎はおろされて、介添えの女がすだれをかかげてかの新婦を連れ出すと、思いきや轎の内には又ひとりの女が坐っていた。それは年頃も顔かたちも風俗も、新婦と寸分ちがわない女で、みずから轎を出て来て、新婦と肩をならべて立った。それには人びとも驚かされたが、女は二人ながら口をそろえて、自分が今夜の花嫁であるという。そ
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