中国怪奇小説集
池北偶談
岡本綺堂

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)清《しん》朝も

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)相|列《なら》んで、

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「目+隹」、第3水準1−88−87]陽《すいよう》
−−

 第十三の男は語る。
「清《しん》朝もその国初の康煕《こうき》、雍正《ようせい》、乾隆《けんりゅう》の百三十余年間はめざましい文運隆昌の時代で、嘉慶《かけい》に至って漸く衰えはじめました。小説筆記のたぐいも、この隆昌時代に出たものは皆よろしいようでございます。わたくしはこれから王士禎《おうしてい》の『池北偶談』について少しくお話をいたそうと存じます。王士禎といってはお判りにならないかも知れませんが、王漁洋《おうぎょよう》といえば御存じの筈、清朝第一の詩人と推される人物で、無論に学者でございます。
 この『池北偶談』はいわゆる小説でもなく、志怪の書でもありません。全部二十六巻を談故、談献、談芸、談異
次へ
全25ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング