の四項に分けてありまして、談異はその七巻を占めて居ります。右の七巻のうちから今夜の話題に適したようなものを選びまして、大詩人の怪談をお聴きに入れる次第でございます」
名画の鷹
武昌《ぶしょう》の張氏《ちょうし》の嫁が狐に魅《みこ》まれた。
狐は毎夜その女のところへ忍んで来るので、張の家では大いに患《うれ》いて、なんとかして追い攘《はら》おうと試みたが、遂に成功しなかった。
そのうちに、張の家で客をまねくことがあって、座敷には秘蔵の掛物をかけた。それは宋《そう》の徽宗《きそう》皇帝の御筆《ぎょひつ》という鷹《たか》の一軸である。酒宴が果てて客がみな帰り去った後、夜が更《ふ》けてからかの狐が忍んで来た。
「今夜は危なかった。もう少しでひどい目に逢うところであった」と、狐はささやいた。
「どうしたのです」と、女は訊《き》いた。
「おまえの家の堂上に神鷹《しんよう》がかけてある。あの鷹がおれの姿をみると急に羽ばたきをして、今にも飛びかかって来そうな勢いであったが、幸いに鷹の頸《くび》には鉄の綱が付いているので、飛ぶことが出来なかったのだ」
女は夜があけてからその話をすると、家
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