「赤+おおざと」、第3水準1−92−70]《かく》某はかつて湖広の某郡の推官《すいかん》となっていた。ある日、捕盗の役人を送って行って、駅舎に一宿した。
 夜半に燈下に坐して、倦《う》んで仮寝《うたたね》をしていると、恍惚のうちに白衣の女があらわれて、鍼《はり》でそのひたいを刺すと見て、おどろき醒めた。やがてほんとうに寝床にはいると、又もやその股を刺す者があった。痛みが激しいので、急に童子を呼び、燭《しょく》をともしてあらためると、果たして左の股に鍼が刺してあった。
 おそらく刺客《しかく》の仕業《しわざ》であろうと、燭をとって室内を見廻ったが、別に何事もなかった。家の隅の暗いところに障子代りの衣《きぬ》が垂れているので、その隙間から窺うと、そこには大きい鳥のような物が人の如くに立っていた。その全身は水晶に似て、臓腑《ぞうふ》がみな透いて見えた。
 化鳥《けちょう》は人を見て直ぐにつかみかかって来たので、※[#「赤+おおざと」、第3水準1−92−70]も手に持っている棒をふるってかれに逼《せま》った。化鳥はとうとう壁ぎわに押し詰められて動くことが出来なくなったので、※[#「赤+おおざと
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