、かの卒を見知り人にして、他の役人らが付き添って、近所の廟をたずね廻らせると、城隍廟《じょうこうびょう》のうちに大小の土人形がならんでいる。その顔や形がそれらしいというので、試みに一つの人形の腹を毀《こわ》してみると、果たして銀があらわれた。つづいて他の人形を打ち砕くと、皆その腹に銀をたくわえていた。さらに足の下の土をほり返すと、土の中からもたくさんの銭《ぜに》が出た。
 卒が貰った銭と、掘り出した銀と銭とを合算すると、あたかも紛失の金高に符合しているので、もう疑うところはなかった。
 土人形は片っ端から打ち毀《こわ》された。その以来、怪しい賭博者は影をかくした。

   野象の群れ

 宋の乾道《けんどう》七年、縉雲《しんうん》の陳由義《ちんゆうぎ》が父をたずねるために※[#「門<虫」、第3水準1−93−49]《みん》より広《こう》へ行った。その途中、潮《ちょう》州を過ぎた時に、土人からこんな話を聞かされた。
 近年のことである。恵《けい》州の太守が一家を連れて、福《ふく》州から任地へ赴《おもむ》く途中、やはりこの潮州を通りかかると、元来このあたりには野生の象が多くて、数百頭が群れを
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