がて城門の前に行き着くと、そこには門を守る人が立っているので、こちらでは試みに会釈すると、かれらはやはり知らない顔をしているのです。そこで、構わずに城内へはいり込んでゆくと、建物もなかなか宏壮で、そこらを往来している人物もみな立派にみえますが、どの人もやはりこちらを見向きもしないので、ますます奥深く進んでゆくと、その王宮では今や饗宴の最中らしく、大勢の家来らしい者が列坐している。その服装も器具も音楽もみな中国と大差がないのでした。
咎める者がないのを幸いに、人びとは王座のそばまで進み寄ってうかがうと、王は俄かに病いにかかったという騒ぎです。そこで巫女《みこ》らしい者を呼び出して占わせると、かれはこう言いました。
「これは陽地の人が来たので、その陽気に触れて、王は俄かに発病されたのでござります。しかしその人びとも偶然にここへ来合わせたので、別に祟《たた》りをなすというわけでもござりませんから、食い物や乗り物をあたえて還《かえ》してやったらよろしゅうござりましょう」
すぐに酒や料理を別室に用意させたので、人びとはそこへ行って飲んだり食ったりしていると、巫女をはじめ他の家来らも来て何か祈
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