ろいろの馳走をしてくれた末に、徐が材木を仕入れに来ていることを聞いて、青年は言いました。
「それならば私の持っている山に材木がたくさんありますから、早速に伐り出させましょう」
 舟へ帰って待っていると、果たして一両日の後にたくさんの材木を運ばせて来ました。しかも木地が良くて、値《ね》が廉《やす》いので、徐は大喜びで取引きをしました。
 それでもうこの土地にいる必要もないので、徐はさらに暇乞《いとまご》いに行きますと、青年はまた四枚の大きい杉の板を出しました。
「これは売り買いではなく、わたしからお餞別《せんべつ》に差し上げるのです。呉《ご》の地方へお持ちになると、きっと良い御商法になりましょう」
 そこで、呉の地方へ舟を廻しますと、あたかも呉の帥《そつ》が死んで、その棺にする杉の板が入用だということになったのですが、その土地にはよい板がない。そこへかの杉を売り込みに行ったので、たちまち買い上げられることになって、一度に数十万銭を儲けました。
 徐もその謝礼として、種々の珍しい物を買い込んで、再びかの青年のところへ持参すると、青年もよろこんで再び材木を売ってくれました。
 その後にもまた
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