ほとんど赤裸《あかはだか》になってしまいました。そうして、廟に近い渓川《たにがわ》のほとりまで登って来ますと、一人の卒《そつ》が出て参りました。卒は青い着物をきて、白い皮で膝を蔽っていましたが、つかつかと寄って来て、かの役人を捕えるのです。
「この人は酔っているのですから、どうぞ御勘弁を……」
こう言って、画工が取りなすと、卒は怒って叱り付けました。
「おまえ達に何がわかるか。黙っていろ」
卒は遂に彼を捕虜《とりこ》にして、川のなかに坐らせました。その様子が唯《ただ》の人らしくないと思ったので、画工は走って廟中の人びとに訴えると、大勢が出て来ました。見ると、卒の姿はいつか消え失せて、役人だけが水のなかに坐っているのです。声をかけても返事がないので、更によく見ると、彼はもう死んでいるのでした。あとになって帳簿を調べてみると、彼は修繕の銭百万の半分以上を着服《ちゃくふく》していることが判りました。
夢に火を吹く
張易《ちょうえき》という人が洛陽にいた時に、劉《りゅう》なにがしと懇意になりました。劉は仕官もせずに暮らしている男でしたが、すこぶる奇術を善くするのでした。
ある
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