たくこう》というところの鎮将となっていました。ある夏の夜、鎮門の外に出て涼んでいると、路の南の桑林のなかに、白い着物をきた一人の女が舞っているのを見ました。不思議に思って近寄ると、女のすがたは消えてしまいました。
あくる夜、蔡は杖を持ち出して、その桑林の草むらに潜んでいると、やがてかの女があらわれて、ゆうべと同じように舞い始めたので、彼は飛びかかって打ち仆《たお》すと、女は一枚の白金に変りました。さらにその辺の土を掘り返すと、数千両の銀が発見されました。
海神
江南の朱廷禹《しゅていう》という人の親戚なにがしが海を渡るときに難風に逢いまして、舟がもうくつがえりそうになりました。
「それは海の神が何か欲しがっているのですから、ためしに荷物を捨ててごらんなさい」と、船頭が言いました。
そこで、舟に積んでいる荷物を片端から海へ投げ込みましたが、波風はなかなか鎮まりそうもありません。そのうちに一人の女が舟に乗って来ました。女は絶世の美人で、黄いろい衣《きもの》を着て、四人の従卒に舟を漕がせていましたが、その卒はみな青い服を着て、朱《あか》い髪を散らして、豕《いのこ》のような牙《
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