りぢりになりました。敵は隙間なく追いつめて来ます。
とても逃げおおせることは出来ないと覚悟して、呉はかの剣をもってみずから首を刎《は》ねて死にました。
金児と銀女
建安の村に住んでいる者が、常に一人の小さい奴《しもべ》を城中の市《いち》へ使いに出していました。
家の南に大きい古塚がありまして、城へ行くにはここを通らなければなりません。奴がそこを通るたびに、黄いろい着物をきた少年が出て来て、相撲を一番取ろうというのです。こっちも年が若いものですから、喜んでその相手になって、毎日のように相撲を取っていました。それがために往復の時間が毎日おくれるので、主人が怪しんで叱りますと、奴も正直にその次第を白状しました。
「よし。それではおれが一緒にゆく」
主人は槌《つち》を持って草のなかに忍んでいると、果たしてかの少年が出て来て、奴に相撲をいどむのです。主人が不意に飛び出して打ち据えると、少年のすがたは忽ちに金で作った小児に変りました。それを持って帰ったので、主人の家は金持になりました。
又一つ、それに似た話があります。
廬《ろ》州の軍吏|蔡彦卿《さいげんけい》という人が拓皐《
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