行って、毛のありかを探しているうちに、持って来た薪も大抵は売り尽くしてしまいました。
 そのときに一匹の蒼白い蛇が船舷《ふなぞこ》にわだかまっているのを初めて発見しましたが、蛇は人を見てもおとなしくとぐろ[#「とぐろ」に傍点]を巻いたままで逃げようともしません。さてはこの蛇だなと気がついて、それを持って岸へあがりますと、ようように毛という男の居どころが判りました。
 毛はその蛇を受取って引き伸ばそうとすると、蛇はたちまちに彼の指を強く噛みましたので、毛はあっ[#「あっ」に傍点]と叫んで倒れましたが、それぎりで遂に死んでしまいました。そうして、その死骸は間もなく腐って頽《くず》れました。
 蛇はどこへ行ったか、そのゆくえは知れなかったそうです。

   地下の亀

 李宗《りそう》が楚州の刺史《しし》(州の長官)となっている時、その郡ちゅうにひとりの尼がありまして、ある日、町なかをあるいていると、たちまち大地に坐ったままで動かなくなりました。おまけに幾日も飲まず食わずにいるのです。
 その訴えを聞いて、李は武士らに言い付けて無理にその尼のからだを引き起して、試みにその坐っていた地の下をほ
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