大地も為に震動する。住民が冬期に田を焼く時、あるいは誤まって彼を焼き殺すことがあるが、他の蛇に比して脂が多いのみである。
乾符《けんぷ》年中のことである。神仙《しんせん》駅に巨きい蛇が出た。黒色で、身のたけは三十余丈、それにしたがう小蛇の太さは椽《たるき》のごとく、柱のごとく、あるいは十|石《こく》入り又は五石入りの甕《かめ》のごときもの、およそ幾百匹、東から西へむかって隊を組んで行く。朝の辰《たつ》どき(午前七時―九時)に初めてその前列を見て、夕の酉《とり》どき(午後五時―七時)にいたる頃、その全部がようやく行き尽くしたのであって、その長さ実に幾里であるか判らない。その隊列が終らんとするところに、一人の小児が紅い旗を持ち、蛇の尾の上に立って踊りつ舞いつ行き過ぎた。この年、山南の節度使の陽守亮《ようしゅりょう》が敗滅した。
会稽山《かいけいざん》の下に※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]冠蛇《けいかんだ》というのが棲んでいる。かしらには雄※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]《おんどり》のような※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]冠《とさか》があって、長さ一尺あまり
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