首と、かの男の首と、それが一緒に煮え爛れて、どれが誰だか見分けることが出来なくなったので、三つの首を一つに集めて葬ることにした。
墓は俗に三王の墓と呼ばれて、今も汝南《じょなん》の北、宜春《ぎしゅん》県にある。
宋家の母
魏《ぎ》の黄初《こうしょ》年中のことである。
清河《せいか》の宋士宗《そうしそう》という人の母が、夏の日に浴室へはいって、家内の者を遠ざけたまま久しく出て来ないので、人びとも怪しんでそっと覗《のぞ》いてみると、浴室に母の影は見えないで、水風呂のなかに一頭の大きいすっぽんが浮かんでいるだけであった。たちまち大騒ぎとなって、大勢が駈け集まると、見おぼえのある母のかんざしがそのすっぽんの頭の上に乗っているのである。
「お母さんがすっぽんに化けた」
みな泣いて騒いだが、どうすることも出来ない。ただ、そのまわりを取りまいて泣き叫んでいると、すっぽんはしきりに外へ出たがるらしい様子である。さりとて滅多《めった》に出してもやられないので、代るがわるに警固しているあいだに、あるとき番人の隙《すき》をみて、すっぽんは表へ這い出した。又もや大騒ぎになって追いかけたが、す
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