中国怪奇小説集
開会の辞
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)青蛙堂《せいあどう》は

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)秋雨|瀟々《しょうしょう》
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 青蛙堂《せいあどう》は小石川《こいしかわ》の切支丹坂《きりしたんざか》、昼でも木立ちの薄暗いところにある。広東《カントン》製の大きい竹細工の蝦蟆《がま》を床の間に飾ってあるので、主人みずから青蛙堂と称している。蝦蟆は三本足で、支那《しな》の一部に崇拝される青蛙神を模造したものである。
 この青蛙堂の広間で、俳句や書画《しょが》の会が催されることもある。怪談や探偵談などの猟奇趣味の会合が催されることもある。ことしの七月と八月は暑中休会であったが、秋の彼岸も過ぎ去った九月の末、きょうは午後一時から例会を開くという通知を受取ったので、あいにくに朝から降りしきる雨のなかを小石川へ出てゆくと、参会者はなかなかの多数で、いつもの顔触れ以外に、男おんなをまぜて新しい顔の人びとが十人あまりも殖えていた。
 主人からそれぞれに紹介されて、例のごとくに茶菓《さか》が出る。来会者もこれで揃ったとい
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