」
主人の挨拶はまだ長かったが、大体の趣意はこんなことであったと記憶している。それが終って、きょうの講演者が代るがわるに講話を始めた。火ともし頃に晩餐が出て、一時間ほど休憩。それから再び講話に移って、最後の『閲微草堂筆記』を終ったのは、夜の十一時を過ぐる頃であった。さらに茶菓の御馳走になって、十二時を合図に散会。秋雨|瀟々《しょうしょう》、更《ふ》けても降り止まなかった。
この日の講話が速記者幾人によって速記されていたことを知っているので、わたしはその後に青蛙堂を訪問して、その速記の原稿を借り出して来て、最初から繰り返して読んだ。速記のやや曖昧《あいまい》なところは原本と対照して訂正した。そうして出来あがったのが此の一巻である。仮りに題して『支那怪奇小説集』という。さらに主人や講演諸氏の許可を得て、これを世間に発表することにした。諸氏に対して彼氏、彼女氏の敬称を用いず、単に男とか女とか記載したのは、わたしの無礼、御勘弁を願いたい。
言うまでもないことであるが、これらの書はみなその分量の多いものであるから、勿論その全部が紹介されているわけではない。取捨《しゅしゃ》は講演者の自由に
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