心中浪華の春雨
岡本綺堂
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)寛延《かんえん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)二|己巳年《つちのとみどし》の
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「日+向」、第3水準1−85−25]
−−
一
寛延《かんえん》二|己巳年《つちのとみどし》の二月から三月にかけて、大坂は千日前《せんにちまえ》に二つの首が獄門に梟《か》けられた。ひとつは九郎右衛門という図太い男の首、他のひとつはお八重という美しい女の首で、先に処刑《しおき》を受けた男は赤格子《あかごうし》という異名《いみょう》を取った海賊であった。女は北の新地のかしく[#「かしく」に傍点]といった全盛の遊女で、ある蔵《くら》屋敷の客に引かされて天満の老松辺に住んでいたが、酒乱の癖が身に禍いして、兄の吉兵衛に手傷を負わせた為に、大坂じゅう引廻《ひきまわ》しの上に獄門の処刑を受けたのであった。
これが大坂じゅうの噂に立って、豊竹座の人形芝
次へ
全28ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング