に音もなしに落ちるばかりで、池の水は静かに淀んでいます。岸の一部には芦や芒が繁っているが、ほかに水草らしいものも見えず、どちらかといえば清らかな池です。これがいろいろの伝説を蔵している龍馬の池であるかと思うと、わたしは軽い失望を感じて、なんだか横田君にあざむかれているようにも思われました。
「水を汲んで来ます。」
 こう言って、昌吉は湯沸しを提げて行きました。池の北にある桜の大樹の下に清水の湧く所がある。その水がこの池に落ちるのだそうで、夏でも氷のように冷たいと、横田君は説明していました。
「さあ、茶の出来るあいだに、仕事をはじめますかな。」
 横田君は写真機を取出しました。わたしも機械を取出して、ふたりはいろいろの位置から四、五枚写しましたが、昌吉はなかなか帰って来ません。
「あいつ、何をしているのかな。」
 横田君は大きい声で彼の名を呼びましたが、返事がない。そのうちに気がつくと、かの湯沸しはバスケットの傍においてあって、中には綺麗な水が入れてありました。我れわれが写真に夢中になっているあいだに、昌吉はもう水を汲んで来たらしいのですが、さてその本人の姿が見えない。いつまで待ってもい
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