があります。」と、横田君は静かに言いました。「あとで聞くと、その祐慶という仏師は日本の人ではなく、宋《そう》から渡来した者だそうです。日本人ならば髪を切りそうなところを、髭を切って残したというのから考えても、なるほど唐《から》の人らしく思われます。それから七八百年の月日を過ぎるあいだに、土地にもいろいろの変遷があって、黒太夫の家は単に黒屋敷跡という名を残すばかりで、とうの昔にほろびました。龍馬の池も山崩れや出水のためにいくたびかその形をかえて、今では昔の半分にも足らないほどに小さくなってしまいました。それでも龍神の社だけは江戸の末まで残っていたのですが、明治元年の奥羽戦争の際には、この白河が東軍西軍の激戦地となったので、社も焼かれてしまいました。もうその跡に新しく建てるものもないので、そこらは雑草に埋められたままです。」
「そうすると、かの木馬も一緒に焼けてしまったのですね。」
「誰もまあそう思っていたのです。したがって、そのゆくえを詮議する者もなかったのですが、それからおよそ四十年ほども過ぎて、日露戦争の終った後のことです。この白河出身の者で、今は南京に雑貨店を開いている堀井という男
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