管《くだ》のなかにどうしてこれだけの漢字を彫ったか、それが一種の疑問であった。
さらに不思議なのは、九百九十年にして終るという、その九百九十年目があたかも今年に相当するらしいことである。浜主はみずからその笛を作って、みずからその命数を定めたのであろうか。今にして考えると、かの石見弥次右衛門の因縁話も嘘ではなかったらしい。怪しい因縁を持ったこの笛は、それからそれへとその持主に禍いして、最後の持主のほろぶる時に、笛もまた九百九十年の命数を終ったらしい。
喜兵衛は、あまりの不思議におどろかされると同時に、自分がこの笛と運命を共にするのも逃れがたき因縁であることを覚った。彼は見届けの役人にむかって、この笛に関する過去の秘密を一切うち明けた上で、尋常に切腹した。
それが役人の口から伝えられて、いずれも奇異の感に打たれた。喜兵衛と生前親しくしていた藩中の誰かれがその遺族らと相談の上で、二つに裂けたかの笛をつぎあわせて、さきに石見弥次右衛門が自殺したと思われる場所にうずめ、標《しるし》の石をたてて笛塚の二字を刻ませた。その塚は明治の後までも河原に残っていたが、二度の出水のために今では跡方もなく
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