らそれへと聞きあるいて、だんだんに北の方へ行って、路ばたに立っている小僧を見つけたのでした。
それですから、きょうも伊助と二人連れで、ともかくも北の方角――出雲崎の方角でございます――を指して尋ねて行きましたが、ゆうべの小僧らしい者の姿を見ない。知らず識らずに進んで鯖石川《さばいしがわ》の岸の辺まで来ますと、御承知かも知れませんが、この川は海へそそいでおります。その海寄りの岸のところに突っ立って水をながめている小僧、そのうしろ姿がどうもそれらしく思われるので、半兵衛があわてて追っかけました。
一方は海、一方は川ですから、ほかに逃げ道もないと多寡《たか》をくくって、伊助はあとからぶらぶら行きますと、真っ先に駈けて行った半兵衛はそのうしろから掴まえて、なにかひと言ふた言いっていたかと思ううちに、どうしたのかよく判りませんが、半兵衛はその小僧にひきずられたように水のなかへはいっていってしまったのです。
それをみて、伊助もびっくりして、これも慌ててその場へ駈け付けましたが、半兵衛も小僧も、水に呑まれたらしく、もうその姿がみえないのです。いよいよ驚いてうろたえて、近所の漁師の家へ駈け込んで
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