うに黙っている。下のかたより會徳を先に村の男村の女出で、窓の外より内を窺う。)
李中行 (いよいよ亢奮して。)さあ、今度は誰だ……。誰だ……。だれの命が四千両と引換えになるのだ。
(李は狂うように立ちかかるを、三人は捨台詞にておさえる。會徳等は内をのぞいて不安らしく囁き合う、家々の砧の音高くきこゆ。)
[#地から1字上げ]――幕――
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第三幕の登場人物
李中行
その妻 柳
そのせがれ 中二
高田圭吉
村の男 會徳
第一の男
第二の男
ほかに村の男三人
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第三幕
おなじく李中行の家。
第二幕より更に十五日の後。小雨ふる宵。
(李中行と高田圭吉が卓の前に向い合っている。卓の上には小さいランプが置いてある。薄く雨の音、虫の声さびしく聞《きこ》ゆ。)
高田 (立ちかかる。)相変らずお邪魔をしました。
李中行 (あわてて引留めるように。)まあ、もう少し話して行ってください。お前さんが帰ってしまうと、急にさびしくなっていけない。中二が来るまで待っていて下さいよ、お願いですから……。
高田 (躊躇して。)中二君は今夜も来るんですか。
李中行
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