世界怪談名作集
幻の人力車
キップリング Rudyard Kipling
岡本綺堂訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)款待《かんたい》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)実際|暴風雨《あらし》に

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ]
−−

       一

[#ここから2字下げ]
悪夢よ、私の安息を乱さないでくれ。
闇の力よ、私を悩まさないでくれ。
[#ここで字下げ終わり]
 印度という国が英国よりも優越している二、三の点のうちで、非常に顔が広くなるということも、その一つである。いやしくも男子である以上、印度のある地方に五年間公務に就いていれば、直接または間接に二、三百人の印度人の文官と、十一、二の中隊や連隊全部の人たちと、いろいろの在野人士の千五百人ぐらいには知られるし、さらに十年間のうちには彼の顔は二倍以上の人たちに知られ、二十年ごろになると印度帝国内の英国人のほとんど全部を知るか、あるいは少なくとも彼らについてなんらかを知るようになり、そうして、どこへ行ってもホテル代を払わずに
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