だしい灯に照らされながら、たちまち私たちの前に立ち現われて来ました。わたしたちは大きい木の吊り橋を音を立てて渡ったかと思うと、二つの巨大な塔のあいだに黒い大きい口をあいている、円《まる》屋根ふうのおおいのある門のうちに乗り入れました。わたしたちがはいると、城のなかは急にどよめきました。松明《たいまつ》をかかげた家来どもが各方面から出て来まして、その松明の火はあちらこちらに高く低く揺れています。わたしの眼はただこの広大な建物に戸惑《とまど》いしているばかりであります。幾多の円柱、歩廊、階段の交錯、その荘厳《そうごん》なる豪奢、その幻想的なる壮麗、すべてお伽噺《とぎばなし》にでもありそうな造りでした。
そのうち黒ん坊の召仕《ページ》、いつかクラリモンドからの手紙をわたしに渡した召仕が眼に入りました。彼はわたしを馬から降ろそうとして近寄ると、頸《くび》に金のくさりをかけた黒いビロードの衣服をつけた執事らしい男が、象牙《ぞうげ》の杖をついて私に挨拶するために出て来ました。見ると、涙が眼から頬を流れて、彼の白い髯《ひげ》をしめらせています。彼は行儀よく頭《かしら》をふりながら、悲しそうに叫びま
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