うな種じゅ様ざまな尊い仕科《しぐさ》をしています。その子供の父は腕を組んでにこやかに微笑《ほほえ》みながら、少し離れたところに立ってその可愛らしい仲間をながめています。
わたしはもうこんな楽しい景色を見るに堪《た》えられなくなって、手あらく窓をしめきって、急いで床のなかに飛び込んでしまいました。わたしのこころは、はげしい嫉妬と嫌悪《けんお》でいっぱいになって、十日も飢えている虎のように、わが指を噛みました。
こうして私はいつまで寝台にいたか、自分でも覚えませんでしたが、床のなかで発作的に苦しみ悶《もだ》えている間に、突然この部屋のまんなかに僧院長のセラピオン師がまっすぐに突っ立って、注意ぶかくわたしを見つめているのに気がつきました。
わたしは非常に恥かしくなって、おのずと胸の方へ首を垂れて、両手で顔を掩いかくしたのです。セラピオン師はしばらく無言で立っていましたが、やがて私に言いました。
「ロミュオー君。何か非常に変わったことがあなたの身の上に起こっているようですな。あなたの様子はどうも理解できない。あなたはいつも沈着で敬虔《けいけん》な温順《すなお》な人物であるのに、どうしてそ
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