なり。)
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かつら いつはりならぬ證據、これ御覽くださりませ。
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(頼家は假面を取りて打ちながめ、思はず感嘆の聲をあげる。)
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頼家 おゝ、見事ぢや。よう打つたぞ。
五郎 上樣おん顏に生寫しぢや。
頼家 むゝ。(飽かず打戍る)
僧 さればこそ云はぬことか。それほどの物が出來してゐながら、兎かう澁つて居られたは、夜叉王どのも氣の知れぬ男ぢや。はゝゝゝゝ。
夜叉王 (形をあらためる)何分にもわが心にかなはぬ細工、人には見せじと存じましたが、かう相成つては致方もござりませぬ。方々にはその面《おもて》をなんと御覽なされまする。
頼家 さすがは夜叉王、あつぱれの者ぢや。頼家も滿足したぞ。
夜叉王 あつぱれとの御賞美は憚《はゞか》りながらおめがね違ひ、それは夜叉王が一生の不出來。よう御覽《ごらう》じませ。面は死んでをりまする。
五郎 面が死んでをるとは……。
夜叉王 年ごろあまた打つたる面は、生けるがごとしと人も云ひ、われも許して居りまし
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