早う取り寄せておこうぞ。
夜叉王 おお、職人はその心がけがのうてはならぬ。更《ふ》けぬ間に、ゆけ、行け。
春彦 夜とは申せど通いなれた路、一※[#「日+向」、第3水準1−85−25]《いっとき》ほどに戻って来まする。
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(春彦は出てゆく。楓は門《かど》にたちて見送る。修禅寺の僧一人、燈籠《とうろう》を持ちて先に立ち、つづいて源の頼家卿、二十三歳。あとより下田五郎景安、十七八歳、頼家の太刀をささげて出づ。)
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僧 これ、これ、将軍家のおしのびじゃ。粗相があってはなりませぬぞ。
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(楓ははッと平伏《ひれふ》す。頼家主従すすみ入れば、夜叉王も出で迎える。)
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夜叉王 思いもよらぬお成りとて、なんの設けもござりませぬが、まずあれへお通りくださりませ。
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(頼家は縁に腰をかける。)
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夜叉王 して、御用の趣は。
頼家 問わず
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