小坂部伝説
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)小坂部《おさかべ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)後室|碪《きぬた》の前

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1−91−26]
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 わたしは帝劇のために「小坂部《おさかべ》姫」をかいた。それを書くことに就いて参考のために、小坂部のことをいろいろ調べてみたが、どうも確かなことが判らない。伝説の方でも播州姫路の小坂部といえば誰も知っている。芝居の方でも小坂部といえば、尾上家に取っては家の芸として知られている。それほど有名でありながら、伝説の方でも芝居の方でもそれがはっきりしていないのである。
 まず伝説の方から云うと、人皇第九十二代のみかど伏見天皇のおんときに、小刑部《おさかべ》という美しい女房が何かの科《とが》によって京都から播磨国に流され、姫山――むかしは姫路を姫山と云った。それが姫路と呼びかえられたのは慶長以後のことで、むかし
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