命をひらいたと共に、崔のために身をほろぼすことになってしまったのだ。」
「では、その娘が殺したのか。」と、わたしは少し意外らしく訊いた。「たとい李という奴が大山師《おおやまし》であろうとも、崔にとっては恩人じゃないか。」
「もちろん恩人には相違ないが、李も独身者《ひとりもの》だ。崔の娘がまだ十三、四のころから関係をつけてしまって、妾のようにしていたのだ。崔も自分の恩人ではあり、李に離れては路頭に迷うわけでもあるから、おとなしく彼にもてあそばれていたのだが、その一座に周という少年俳優がある。これも孤児で旅先から拾われて来たものだが、容貌《きりょう》がよいので年の割には重く用いられていた。崔と周とは同じような境遇で、おなじような年頃であるから、自然双方が親密になって、そのあいだに恋愛関係が生じて来ると、眼のさとい李は忽ちにそれを看破《かんぱ》して、揃いも揃った恩知らずめ、義理知らずめと、彼はまず周に対して残虐な仕置《しおき》を加えた。彼は崔の見る前で周を赤裸にして、しかも両手を縛りあげて、ほとんど口にすべからざる暴行をくり返した。それが幾晩もつづいたので、美少年の周は半病人のようにやつれ果
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