、女もさすがに江戸っ子ですから、自分よりも年下の六三郎に関係した始末を、ちっとも悪びれずに白状して、親分のお目を掠めたのはわたくしが重々の不埒ですから、どうぞ御存分になすって下さいましと、いさぎよく自分のからだを投げ出してしまいました。これがひどく吉五郎の気に入って、「よく綺麗に白状した。で、おまえは十歳《とお》も年の違う六三郎と夫婦になりてえか。」と訊きましたら、お初は「そうなれば自分は本望です。弟だと思って面倒を見てやります。」と、正直に答えたそうです。
それを聞いても吉五郎は憤《おこ》りませんでした。「よし、お前がそれほどに思っているならば、おれが媒介《なこうど》をして六三郎と一緒にしてやるから、いつまでも可愛がってやれ。しかし相手は子供だ、おまけに旅を廻る芸人だ。いい加減にだまされていちゃあ詰まらねえから、まったく相手の方でもお前を思っているかどうだか、よくその性根を試した上で、おれの方から本人に話をつけてやろう。まあ、そのつもりで待っていろ。」というので、それからひと趣向して六三郎を呼び付けたのです。お初の顔や身体には糊紅を塗って、なぶり殺しにでもされたように拵えて、座敷の
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