たのですが、どういう魔がさしたものか、その奥様が用人神原伝右衛門のせがれ伝蔵と不義を働いていることが主人の耳にも薄々這入ったらしいので、ふたりも落ちついてはいられません。伝蔵の身よりの者が奥州白河にあるので一先ずそこへ身を隠すつもりで、内々で駈落の支度をしていました。その時、伝蔵は二十歳、奥さまのお睦は二十三で、むすめのお金は年弱の三つ、弟の庄之助はこの春生れたばかりの赤ん坊であったそうです。
 年下の家来と駈落をするほどの奥様でも、ふだんから姉娘のお金をひどく可愛がっていたので、この子だけは一緒に連れて行きたいという。これには伝蔵もすこし困ったでしょうが、なにしろ主人で年上の女のいうことですから、結局承知してお金だけを連れ出すことになりました。十二月の十三日、きょうは煤はきで屋敷中の者も疲れて眠っている。その隙をみて逃げ出そうという手筈で、男と女は手まわりの品を風呂敷づつみにして、お金の手をひいて夜なかに裏門からぬけ出しました。年弱の三つという女の児を歩かせてゆくわけには行きませんから、表へ出るとお睦はお金を背中に負いました。伝蔵は荷物を背負《しょ》いました。大川づたいに綾瀬の上《か
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