り無言で引立てゝ行きました。出てゆく時に、照之助は救いを求めるような悲しい眼をして、奥様とわたくしの方を二度見かえりましたが、わたくし共にも今更どうすることも出来ないので、唯だまって見送っていますと、侍たちは照之助を引立てゝ縁伝いにお庭口へ降りて、横手の方へ連れて行くようでございました。わたくしも不安心で堪りませんから、そっと起ち上ってお庭へ降りました。照之助がどうなるのかその行末が見とゞけたいので、跫音をぬすんで怖々にそのあとをつけて行きますと、なにしろ外は真暗なので、侍達もわたくしには気が注《つ》かないらしゅうございました。
 御座敷の横手には古い土蔵が二棟つゞいて居ります。照之助はその二番目の士蔵の前へ連れてゆかれますと、土蔵の中にはさっきから待受けている人があるとみえて、手燭の灯が小さくぼんやり[#「ぼんやり」に傍点]と点っていました。わたくしも奥様の御用で二三度この土蔵のなかへ這入ったことがございますが、御屋敷の土蔵だけに普通の町家のよりもずっと大きく出来て居りまして、昼間でも暗い冷たい厭なところでございます。中には大きい蛇が棲んでいるとか云って、お竹やお清に嚇されたこともあ
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