にもいう通り、梅の井の家内の者も大勢そこに出ている。喧嘩を見る往来の人もあつまっている。その大勢が見ているまん中で、自分の惚れている女に「刺青がない。」と云われたのは、胸に焼鉄《やきがね》と云おうか、眼のなかに錐と云おうか、兎にかくに清吉にとっては急処を突かれたような痛みを感じました。
お金のおふくろは清吉やお金を嘲弄するつもりで云ったのではなかったが、お金の耳にはそれが一種の嘲弄のようにきこえる。お金も亦、清吉を侮辱するつもりでは無かったのですが、清吉の身にはそれが嘲弄のように感じられる。つまりは感情のゆき違いと云ったようなわけで、左《さ》らでも逆上《のぼ》せている清吉はいよ/\赫となりました。そうなると男は気が早い。物をも云わずにお金の島田をひっ掴んで、往来へ横っ倒しに捻じ倒すと、あいにくに水が撤いてあったので、お金は可哀そうに帯も着物も泥まぶれになる。それでも、利かない気の女だから倒れながら怒鳴りました。
「清ちゃん、あたしをどうするんだえ。腹が立つなら寧《いっ》そ男らしく殺しておくれ。」
清吉はもう逆上《のぼ》せ切っていたと見えて、勿論、ほんとうに殺す気でもなかったのでしょ
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