組討になると、健次郎の方にも四五人、綱吉の方にも三四人の加勢が出て、畳の上でどたばた[#「どたばた」に傍点]という大騒ぎが始まりました。
健次郎はこの近所に屋敷を持っている百石取りの小さい旗本の忰で、綱吉は三河屋という米屋の忰です。師匠はふだんから分け隔てのないように教えていても、屋敷の子と町家の子とのあいだには自然に隔てがある。さあ喧嘩ということになると、武家の子は武家方、町家の子は町家方、たがいに党を組んでいがみ合うようになります。きょうも健次郎の方には武家の子どもが加勢する。綱吉の方には町家の子どもが味方するというわけで、奥さんや女中が制してもなか/\鎮まらない。そのうちに健次郎をはじめ、武家の子供たちが木刀をぬきました。子供ですから木刀をさしている。それを抜いて振りまわそうとするのを見て、師匠の市川さんももう捨て置かれなくなりました。
「これ、鎮まれ、鎮まれ。騒ぐな。」
いつもならば叱られて素直に鎮まるのですが、きょうはお祭で気が昂《た》っているのか、どっちもなか/\鎮まらない。市川さんは壁にかけてあるたんぽ[#「たんぽ」に傍点][#「たんぽ」は底本では「たんぼ」]槍を把《
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