ちっ》とも分け隔てがない。それですから、町家の親達はいよ/\喜んでいました。
 それだけならば、至極結構なわけで、別にお話の種になるような事件も起らない筈ですが、嘉永二年の六月十五日、この日は赤坂の総鎮守氷川神社の祭礼だというので、市川さんの屋敷では強飯《こわめし》をたいて、なにかの煮染《にし》めものを取添えて、手習子たちに食べさせました。きょうは御稽古は休みです。土地のお祭りですから、どこの家《うち》でも強飯ぐらいは拵えるのですが、子供たちはお師匠さまのお屋敷で強飯の御馳走になって、それから勝手に遊びに出る。それが年々の例になっているので、今年もいつもの通りにあつまって来る。奥さんやお嬢さんや女中が手伝って、めい/\の前に強飯とお煮染めをならべる。いくら行儀がいゝと云っても、子供たちのことではあり、殊にきょうはお祭りだというのですから、大勢がわあ/\騒ぎ立てる。それでも不断の日とは違うから、誰も叱らない。子供たちは好い気になって騒ぐ。そのうちに、今井健次郎という今年十二になる男の児が三河屋綱吉という同い年の児の強飯のなかへ自分の箸を突っ込んだ。それが喧嘩のはじまりで、ふたりがとう/\
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