私の机
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)方《かた》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ぶくぶく[#「ぶくぶく」に傍点]
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ある雑誌社から「あなたの机は」という問合せが来たので、こんな返事をかいて送る。
天神机――今はあと方《かた》もなくなってしまいましたが、私が子供の時代には、まだそれが一般に行われていて、手習をする子は皆それに向ったものです。わたしもその一人でした。今でも寺子屋の芝居をみると、何だか昔がなつかしいように思われます。
これも今はあまり流行《はや》らないようですが、以前は普通に用いる机は桐材が一番よいということになっていました。木肌が柔かなので、倚《よ》りかかる場合その他にも手あたりが柔かでよいというのでした。その代りに疵《きず》が附き易《やす》い。文鎮を落してもすぐに疵が附くというわけですから、少し不注意に取扱うと疵だらけになる。それが桐材の欠点で、自然に廃《すた》れて来たのでしょう。それから一貫張りの机が一時は流行しました。これも柔かでよいのと、軽くてよいのと、値段が割合に高くないのとで
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