、一時は非常に持囃《もてはや》されましたが、何分にも紙を貼ったものであるから傷《いた》み易い。水などを零《こぼ》すと、すぐにぶくぶく[#「ぶくぶく」に傍点]と膨《ふく》れる。そんな欠点があるので、これもやがて廃れました。それでもまだ小机やチャブ台用としては幾分か残っているようです。
わたしは十五のときに一円五十銭で買った桐の机を多年使用していました。下宿屋を二、三度持ちあるいたり、三、四度も転居したりしたので、殆《ほとん》ど完膚《かんぷ》なしというほどに疵だらけになっていましたが、それが使い馴れていて工合がよいので、ついそのままに使いつづけていました。しかし十五の時に買った机ですから少し小さいのが何分不便で、大きな本など拡《ひろ》げる場合には、机の上を一々片付けてかからなければならない。とうとう我慢が出来なくなって、大正十二年の春、近所の家具屋に註文して大きい机を作らせました。木材はなんでもよいといったら、センで作って来たので、非常に重い上に実用専一のすこぶる殺風景なものが出来あがりました。その代り、机の上が俄《にわか》に広くなったので、仕事をする時に参考書などを幾冊も拡げて置くには
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