ということです。
 百物語、これは槍、剣術の先生の宅などでよく催されましたが、一種の胆《きも》だめしです。これは御承知の通り、まず集まった人の数だけの灯心を行灯に入れて、順々に怪談を一席ずつ話して、一人の話が終わるごとに灯心を一本ずつ消してゆくのです。そして庭の淋しそうなところに、矢などを立てておいて、それを取りに行くそうですが、最後の灯心を消すと、なにか化物が出ると言い伝えられていました。
 こんなのを一々数えていたら際限がありませんから、まずこのくらいのところにしておきましょう。

[#地付き](大正十一年二月、贅六堂刊『風俗江戸物語』所収)



底本:「伝奇ノ匣2 岡本綺堂妖術伝奇集」学研M文庫、学習研究社
   2002(平成14)年3月29日初版発行
底本の親本:「風俗江戸物語」贅六堂
   1922(大正11)年2月
入力:川山隆
校正:門田裕志
2008年9月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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