江戸の化物
岡本綺堂

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)頻々《ひんぴん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)塚原|渋柿園《じゅうしえん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)祟《たたり》だ[#「祟《たたり》だ」は底本では「崇《たたり》だ」]
−−

          池袋の女

 江戸の代表的怪談といえば、まず第一に池袋の女というものを挙げなければなりません。
 今日の池袋の人からは抗議が出るかもしれませんが、どういうものか、この池袋の女を女中などに使いますと、きっと何か異変があると言い伝えられて、武家屋敷などでは絶対に池袋の女を使わないことにしていたということです。また、町家などでも池袋の女を使うことを嫌がりましたので、池袋の女の方でも池袋ということを隠して、大抵は板橋とか雑司ヶ谷とかいって奉公に出ていたのだそうです。
 それも、女が無事におとなしく勤めている分には別になんの仔細もなかったのですが、もし男と関係でもしようものなら、忽ち怪異が頻々《ひんぴん》として起こるというのです。
 これは、池袋の女が七面様
次へ
全12ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング