とぐらゐ痛くつても構はない、遠慮なしにぐる[#「ぐる」に傍点]/\卷きにふん[#「ふん」に傍点]縛れよ。
雲哲 大屋さんからお許しが出たのだ。せいぜい嚴重に縛つてやれ。
願哲 はゝ、面白い、面白い。
おかん なにが面白いものか。ほんたうに好い面の皮だ。
助八 こいつ等、面白半分に騷ぎ立てやあがると、おれが料簡しねえぞ。
六郎 はて、喧嘩をしてはならない。靜かにしろ、靜かにしろ。
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(雲哲と願哲は笑ひながら二人を縛りあげる。六郎兵衞も彦三郎を縛る。)
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六郎 ところで、そつちの二人は兎《と》も角《かく》も、この人を數寄屋橋内《すきやばしうち》まで引摺つて行くのは可哀さうだ。(土間をみかへる。)おゝ、丁度そこに駕籠がある、と云って、權三と助十は繩附きで擔がせるわけにも行かず、これ、助八。だれか相棒をさがして擔いで行け。
助八 え、おれにかつがせるのかえ。
六郎 あたりまへよ。貴樣の商賣ではないか。
助八 商賣は商賣だが、こいつは氣のねえ仕事だな。どうで酒手《さかて》は出やあ
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