に合はねえ、そいつをこゝへ追つ放して、片っ端から引つ掻かして遣るのだ。
おかん (おどろく。)あれ、馬鹿なことをお云ひでないよ。呆《あき》れた人だねえ。
雲哲 惡巫山戲《わるふざけ》はいけない、いけない。(起ちあがる。)
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(助八は猿を取らうとする。與助は遣るまいとする。この爭ひのあひだに助八は又引つかゝれる。)
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助八 あ、こん畜生め、又遣りやあがつたな。もういよ/\料簡《れうけん》がならねえ。うぬ、生膽《いきぎも》を取った上で、兩國《りやうごく》のもゝんじい[#「もゝんじい」に傍点]屋へ賣飛ばすからさう思へ。
與助 えゝ、人の商賣物をどうするのだ。
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(助八と與助は爭つてゐるところへ、上のかたより助八の兄助十、三十歳前後、これも鉢卷、刺青のある肌ぬぎ、尻端折《しりはしよ》りの跣足にて出づ。)
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助十 やい、やい。なにを騷いでゐるのだ。煙草休みも好い加
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