てゐる家主の六郎兵衞でございますよ。
彦三郎 おゝ、左樣でござりましたか。
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(この時、以前の長屋の女房と娘、その次に助八と長屋の男三人、與助と子供ふたりが綱をひいて出づ。)
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助八 (彦三郎に。)えゝ、なにをぼんやり突つ立つてゐやあがるのだ。この案山子《かゝし》野郎め。邪魔だ、邪魔だ。
六郎 よそのお方に失禮をするな。おまへの方でよけて行け。馬鹿野郎め。
助八 又叱られたか。
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(水の音。人々はわや/\云ひながら上の方へ引返して去る。)
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六郎 こゝらの長屋にゐる者は我殺《がさつ》な奴等ばかり揃つてゐるので、他國のお方にはお恥かしうございます。して、おまへさんは誰をたづねてお出でなすつた。
彦三郎 お家主樣をおたづね申してまゐりました。
六郎 なに、わたしを尋ねて來た……。いや、それは、それは……。では、まあこゝへおかけなさい。
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