勢 それ、引いた。引いた。エンヤラサア。
六郎 (上のかたを見て。)それ、引いて來る。早くしろ、早くしろ。
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(助十は上のかたへ駈けてゆく。權三とおかんもかけ出してゆく。やがて上のかたより以前の如く、雲哲、願哲が先に立ち、長屋の男二人と子供ひとりが綱をひいて出づ。助十と權三とおかんも綱をひいてゐる。この時、下のかたの路地口より小間物屋彦三郎、廿歳ぐらゐの若者、旅すがたにて出づ。)
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助十 さあ、さあ、引け、引け。
權三 引いたり、引いたり。
一同 エンヤラサア。
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(彦三郎は綱をひく人々を避《よ》けながら來るうちに、助十に突きあたる。)
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助十 えゝ、なにをしやあがる。
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(助十に突き退《の》けられて、彦三郎はよろめきながら更に權三に突きあたる。)
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