してもいゝかねえ。
權三 大屋さんに叱られたら、あやまる分のことだ。なに、むづかしいことはねえ。あやまれば屹《きつ》と堪忍してくれるよ。
おかん あの大屋さんにあやまるのは、幾らあやまつても口惜しくはないけれど……。
權三 それだからあやまると決めて置けばいゝよ。
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(上のかたより助八は猿を引つかゝへて出づ。あとより與助が追つて出づ。)
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與助 これ、これ、わたしの猿をどこへ持つて行くのだ。
助八 こん畜生、二度も三度もおれにからかやあがつて……。もう生かして置かれるものか。あの井戸へ叩つ込んでしまふのだ。(上のかたへ引返して行きかゝる。)
與助 えゝ、飛んでもないことだ。
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(與助は猿を取返さうとして爭ふところへ、上のかたより助十出づ。)
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助十 これ、八。馬鹿なことをするなよ。
助八 なにが馬鹿だ。
助十 この最中に猿なんぞを相手にして騷いでゐる奴は
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